頬に当たる風が、痛いと感じる初冬の夕方。

先輩は自転車がパンクしたので、歩いて帰ることになった。

奏美のバスの方向と同じだ。

「やっぱり夕方は冷えますね。先輩もバスに乗りませんか?」

「そうだね。でも僕は歩きたいから。」

「じゃあ…私も一緒に歩いていいですか?」

「構わないよ。でも大丈夫?」

「平気です!最近少し運動不足だし。」

奏美は苦笑いした。

「じゃあ、途中までになるけど歩こうか。」

「はい!」

二人並んで、歩道を歩く。

最近工事をされて幅の広くなった歩道は、並んで歩いてもゆったりしている。

心はほんのり暖かいのに、歩道脇の街路樹が秋を終え、衣服をはぎ取られた姿でいるのを見ると、少し肌寒さが増してきた。