軽く妄想しかけていた時、前方から携帯をいじりながら自転車に乗ってくる若者がいた。

フラフラとしているものの、ぶつからないと過信して運転しているようで、奏美たちに気付いていない。

奏美が気付いた時には、もうぶつかる直前だった。

「あ!」

反射的に目を閉じたが、自転車はかすりもせず奏美の横を通りすぎていた。

「大丈夫?」

先輩の声で我に返った。

「絶対ぶつかると思った…なんで…。」

おかしい。

奏美にぶつかるコースを突き進んできていたはずなのに。

なのに横を通り抜けた。

まるで魔法で進路変更されたように。