誘う手の群れ

鳥居と地蔵のあいだにある地蔵の頭をそれぞれが掌で軽くなでて御宿穴へと入って行く。

気のせいか地蔵の瞳から涙のような水が流れ、地蔵の頬にしみを作っていたが、それには誰も気がつかなかった。

輝彦を先頭に、夢月、昌人という順番で御宿穴へと入る。

洞窟内は外気と比べ湿気を帯びた生ぬるい空気があたりを覆っている。

その湿気に混じり、カビの臭いや、なにかが腐った異臭が漂っていた。


「こりゃあすげぇなぁ」


夢月が呟いた。

洞窟の壁を眺めまわしている。

しばらく進むと、洞窟自体が右にカーブしているせいか懐中電灯を点灯させなくては前に進めなくなる。

誰彼とはなしに懐中電灯を点灯しだした。

洞窟内には3人の靴音と、なにかを踏み潰す音が響き、そしてキィキィとなにかが呻いていた。

そんな音が気になってか夢月は懐中電灯で足許を照らしてみた。


「うわぁぁあ! なんだこれはぁぁあ!」


夢月が思わず驚愕の声を上げる。

そこには夢月の足許に異形の蟲たちが蠢き、靴のつま先にまで蟲がまとわりついているのであった。

それは夢月だけではなく、輝彦や昌人も同様であったが、初めて洞窟に入った夢月だけにその驚愕は生半可なものではなかった。

しかし、輝彦はそれもおかまいなしにどんどんと先へと進んでしまう。

それを追うようにして夢月は奥へと進んだ。

そして、昌人がうしろからついてきた。