誘う手の群れ

「ていうか、箱なんてあったかぁ?」


昌人がそう呟く。


「てゆーか、オバケがいるって学校に流れたんだから結果オーライなんじゃない?」


御宿穴に幽霊がいるといううわさを学校に流すいたずらを成功させたのと同時に昌人を納得させた満足感に浸りながら輝彦はジュースを一気に呷った。


「ていうか、クラスじゃまだ半信半疑だぞ」


夢月が言う。


「ていうか、あのバアさんが座っていた箱? あれがあるのかないのかわからないと俺も正直オバケなのか人間なのか分らないなぁ」


昌人もいまだなお御宿穴で見た老婆のことが頭の片隅から離れない様子だった。

たしかに輝彦の言う説明なら納得できる気もしないでもないが、この目で老婆が座っていた箱を目にするまで、それが幽霊なのか、あるいは人間なのか判然としなかった。


「じゃあさ、またあの洞窟に行って確かめるっていうのはどうだ? 鳥居もある、地蔵もある、それで箱があったのなら人が出入りしてるっていう証拠になるしな。 どうだマサぁ?」


輝彦が言う。


「そうだな、俺もこのままじゃなんだかしっくりこないから明日にでもまた見に行くか?」


「俺も!俺も!」


昌人の同意に続いて夢月が食いついた。

どうやら御宿穴探検に非常に興味を持っているようである。


「おしゃ、じゃ、決まりだ。 明日、学校終ったらまた行くぞ」


話は決まった。

その後、3人はしばらくの間、明日の御宿穴探検の打ち合わせをしてそれぞれの帰路についた。