誘う手の群れ

授業中に昌人のところに輝彦からメールがきた。


『あのバアさんなんだったんだ?』


昌人は輝彦の質問について考えてみたけれども納得のいく答えなど浮かぶはずもない。

それよりも輝彦がさっそく御宿穴で見た老婆のことをクラスに話したことについて微かな憤りを覚えずにはいられなかった。

御宿穴に行ったということが両親や、祖母に知られてしまうと怒られるのではないかという思いからであった。


『知らねぇよ。 ていうか、学校終ったらあの洞窟のことで話をしないか?』


授業もろくに受けずに昌人はメールの返事をした。


『おk、てか、あのバアさんで俺たちは嘘つき呼ばわりされているっぽいから、ちと話はしなきゃならないな』


さっそく輝彦から返事が届いた。

教師は昌人や、他のクラスメイトたちが授業中にメールのやり取りをしていることを知ってはいたが、特別注意するわけでもなく、ただ誰に話しかけるわけでもなく虚しく授業をおこなっているだけであった。

中にはケータイを露骨に机の上に置いて授業を受けている生徒も少なくはないが、それに対して注意をすることはなかった。

授業はダラダラと聞いているとすぐに終ってしまい、休憩をはさんで次の授業へと移るが、昌人は机に伏して居眠りをして退屈な授業をやり過ごした。

授業中にふたたび輝彦からメールが届いた。


『なあ、どこで話すっか?』


『駅前のゲーセンでいいんじゃね』


昌人は軽く返事をするとふたたび居眠りをした。

なんとなく身体の具合が悪いような気がしていた。

幽霊にとり憑かれたのではないかと邪推してしまうが、それぐらいに身体が疲れていた。