―連休明け―

無事に魔王は上位魔法を修得していたが、やはり体と心の異変を見過ごすことが出来ない。

訓練中に魔法を一切使わなくなっていた。

いや使わないことで『もう一人の魔王』の存在を抑えつけたかったのだ。

(自分が自分じゃなくなるようじゃ)

そんな魔王を見てメイヤは魔法修得中の異変が気のせいでなかった事を確信する。

「やはり魔王様は『邪悪な心』を身につけようとしておられるようだ。だが、何かおかしい」

メイヤはメイヤで魔王の変化を喜びながら、異変の異様さにも疑問を持っていた。

アーサンはアーサンでいつもより動きが悪い魔王の異変に気づいていた。

「もえちゃんあの日なのかなぁ」

アーサンに監察眼や洞察力は備わっていない。

魔王は心乱してはいけないのだと自身に言い聞かせながら、二人を心配させないためにも訓練に励んだ。

一人に有らぬ誤解を与えながら。



修得:冷静さ