魔王の部屋を出た二人は、気落ちしていた。

先ほど魔王が言った言葉は諦めとも覚悟とも取れる。

「アーサン……協力して戦おう。本気で……本気で勇者を倒そう」

「メイヤ、今さらだよ。僕は最初からそのつもりだよ」

遠距離攻撃の魔法と近距離攻撃の体術が、手を組んだ最強のタッグが出来上がった。

「私たちは魔王教育係として失格だな。勇者を倒そうとしているのだから」

メイヤはまだ葛藤していた。

「そうかもね。……でも魔王教育係としては失格かもしれないけど、親としては当たり前の事だと思うよ」

アーサンの言葉は、メイヤを勇者戦へ駆り立てる決心をさせるには充分だった。

「アーサン……アーサンが初めて頼りに見えるよ」

メイヤが素直にアーサンを褒めた。

「ちょ、えー。ずっと一緒にいて、今頃初めてなの」

こちらは素直に受け止められず、突っ込んでしまう。

「ほら、戦闘準備をしておくよ。後、シュミレーションも」

メイヤが気を取り直して、アーサンを促す。

「二十三年間で初めて……」

全然聞いてなかったアーサン。

「いつまでも……うじうじするな」

メイヤはそう言うと、アーサンにグーで気合いを入れた。

「今から忙しいよ」

気合いが十分に入ったアーサンを引きずりながら、メイヤは準備をするため自室へ帰った。