夕方のニュースで勇者情報の詳細を見る魔王。

「勇者情報です。近頃ボス攻略済みのダンジョンが増えたという情報が入り、調査したところ一人の青年が次々と攻略している、という情報を得るに至りました」

顔写真が出た所で、魔王はニュースを見るのを辞めた。

「メイヤはこの事を知っていて、もえに教えなかったのじゃろうな」

メイヤがした事を考えないといけないのだが、魔王は今、何をどう考えたらいいのか分からない。

宣戦布告時に、邪悪な心に満たされていた状態であっても、アレンに魔王としての姿を見られるであろうことを懸念したくらいアレンの事は気にしていた。

そして、そのアレンは『勇者』と呼ばれる存在になり、魔王の城を目指し、魔王の所に向かっているかもしれないのだ。

だが、魔王にはアレンの目的は分からない。

「力試しでもしてるのか」

ダンジョンを攻略している理由は何かと考えてみる。

「やはり勇者として魔王のもえを倒すためか」

魔王は自分にとっての最悪のケースを想定した。

「アレン……」

アレンの存在を確認した魔王は、いつの間にか勇者アレンに倒されることが、自身にとっての最悪のケースになってしまっていた。

(このままではいかんな)

この時マーサは覚醒の準備を急いでいた。