「どうしたんですか?!」
やはり驚いている。
私はゆっくり顔を上げ、
「衣装を持ってきて…ないんです!」
瞳をぎゅっと瞑った。
すると、まわりから小声でブーイングの嵐。
「まぢかよ」
「撮影できないじゃん」
「どーすんの?」
ザワザワし出した現場。
私は俯くしかなかった。
私のせいで…。
視界が滲んできた。
でもそこをぎゅっと抑えた。
するとカメラマンさんが、何かを思い着いたらしく。
口を開こうとした。
すると…
バンッ
とても大きな音がした、その方へとバッと顔を向けた。
な、なんで?!
私はここにいるはずない“人物”が立っていて、驚いた。
…驚いた、なんてもんじゃない。
声が出ないほど、瞳を奪われていた。
その“人物”は、仁王立ちで怒っていた…。
なんで…ここに!?
「…朝日」
私はボソッと呟いた。
朝日はズカズカと近付いてくる。
私一直線に…。
玲ちゃんや女のスタッフさんなんか瞳がハート。
そのぐらいカッコイイ朝日。
玲ちゃん達の視線を気にせず、私の目の前に来た朝日はこう言った。
「お前、鞄間違えてんだけど?」
「はっ?…あ~、だから衣装がなかったんだ」
“納得納得”と私は腕を組み、首を縦に振った。
朝日は、瞳を大きく見開いた。
そして私の両肩を勢いよく掴んだ。
「お前、もしかして…。鞄の中身…見た?」
何故か慌てていた。
「うん、そーだけど?」
私がさらっと答えると、
「まぢかよ!中身覚えてるか?!」
顔を近付けてきた。

