「ただいま」


扉の開く音を共に声がして、夕飯の支度をする手を止めてパタパタと玄関に駆け寄った。


『お帰りなさい』


エプロン姿のままそう言って出迎えると遥――私の旦那さんは無言で続きを催促してくる。


ええと……//


遥の腕に手をついて軽背伸びをし、目を閉じて唇を合わせる。


いわゆるお帰りなさいのキス。

5年前の新婚当初に半ば無理やり遥に約束させられ、今も変わっていない習慣。


あれからもう5年にもなるのに、まだ少しドキドキする。



『ご飯にする?

お風呂にする?』


……それとも私?


なんて聞けるわけがない。

だって恥ずかしいんだもん。



「飯にするかな」


心なしか機嫌の良さそうな遥の後に続いて家の中に入った。