スタッフさんたちが快く了承してくれたという紫水の言葉は嘘ではなかった。
スタジオを出るときに感じた、熱い視線。
“とことんやっちゃいなさい”と記された志乃さんのスケッチブック。
そしてなにより……。
「フフフフッ……」
奈々子さんのこの笑い。
こ、怖い。
この業界で奈々子さんだけはまともで普通な人だと思ってたのに……。
職業人種って仕事に熱が入ると、人が変わるっていうけどさ。
耳をくすぐる仄暗い笑い声に恐怖を感じる。
恐怖とメイクされるくすぐったさで震えちゃいそう……。
そんな私はすでに用意されていた女装用の衣装に着替えていた。
樹里の時の衣装とはまた違う感じだね。
でもこの服も可愛いな。
「それにしても、光くんってとっても頑張り屋さんなのね」
え?
は?
ん?
私が頑張り屋?
どうして?

