「やっぱ人多いな」


『うん、多いね』


到着した映画館は休日ということもあり、人でごった返していた。


『そういえば、映画って何見るの?』


ガラスケースの中に飾られた映画の宣伝ポスターに目をやって尋ねる。


「特に決めてねえ。

お前は見たいやつないのか?」


決めずに来たの、この人……。

まあでも、何見るか私が決めていいってことだよね?


丸投げしてきた遥に呆れる反面、自分の希望を聞いてくれることを嬉しく思う


『う~ん……んっ?』


呻りつつポスターに順に視線を走らせ、ある一点で止めた。


そのポスターに書かれている日付は今日のもの。

つまり、今日が初公開の作品ということ。


『……遥?

これはどう?

今日放映開始の映画だって』


少し考えてから遥に提案した。


だってこれ、恋愛ものなんだもん。

いきなり恋愛映画二人で見るのはハードルが高い気がする。

でも、こういういかにも“デート”な感じのこともやってみたい。