「……もういい。

人がせっかくハズいの我慢してデートに誘ったのに……」


肩をすくめ、踵を返した遥がボソボソと呟いた一言。

これが聞き捨てならなかった。


『えっ、あれデートの話だったの!?』


私が叫んだのとほぼ時を同じくして、遥はビクッと肩を震わせた。

サッとこちらを振り返った顔には“しまった!!”と書いてある。


さっきの言葉、私に聞かせるつもりはなかったのか。


「……たり前だろ!!//」


開き直り。

それが数秒の逡巡の後に遥が導き出した答えだった。


『……だったら最初からそう言ってよ!!//』


デートのことだってわかんなかったのも、私の顔が赤いのも全部遥のせい。


だけど頬が熱いのをごまかすみたいに文句を言った。


「……お前が鈍過ぎんだろ。

お前は俺様のか、彼女なんだから……//」


気付けば辺りには二人きり。


「帰るぞ//」


並んで歩く中、互いの顔は見ない。

見てないけれど、相手の頬も自分の頬も未だ熱を持っているということは何となくわかっていた。