そんなふうに考えていると、タイミングよく(奏にとってはタイミング悪く)父さんのケータイが鳴りだした。


父さんは腕に抱いていた奏を下ろし、電話に出る。

そして、2、3言葉を交わすとすぐに電話を切った。


その間、つまらなさそうにしている奏を見て、密かにせせら笑っていた。

それがいけなかったのかもしれない。



「ごめんな、二人とも。

お父さん、急なお仕事が入って出かけないといけなくなったんだ」


眉をハの字にして、父さんは心底残念そうに告げた。


せっかく今日は父さんに遊んでもらえると思ったのに。


「うー、や~あ~!!」


奏が駄々をこねる。


それを見て父さんは困ったように笑いながら、


「雅、奏のことをよろしくな」


と言って、出かけてしまった。