遥ver.

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ピクッ……。


「ううっ……」


目覚めるとそこは一面絵の具をぶちまけたように彩られた、おどろおどろしい世界でした。


(俺は確か勇者っぽいやつに掴みかかって、それでいきなり怒った奴が呪文を唱えて……)


氷づく前、何があったか思い出したダンジョンのボス(仮)は、未だ腕や足、頭にまとわりつく氷の呪縛から脱け出そうと身をよじります。



ピキッ。

ベチョッ。


ややあって、氷に亀裂が入り解放されました。

ですが……。


「今の嫌な音は何だ?

ベチョッって……。

それにこの頭のネバつく感じは……?」


氷づけにされながらも、長時間同じ姿勢(非常口の人のポーズ)でいることを強いられ、プルプルと震える手で恐る恐る髪に触れます。



ヌチャッ。


ベタつく何かを指先に感じ、手を目の前にかざしました。


「……これはシロップ、なのか?」


ベタベタする感覚、そして胸焼けを起こしそうなほど甘い匂い。

間違いなくそれがシロップであると確信したダンジョンのボス(仮)は激怒します。