あなたの話した言葉が文章となって構築されていく。
具現化されない、それは陳腐なおとぎ話より難解な事実。
入る隙間がない、あなたの世界。
あなたの目になりたい。
「ごめん、意味わかんない。」
無理やり終わらせた。
文字より映像。言葉はなんてまどろっこしいのだろう。
映像のほうがもっと早く理解できる内容も、言葉だと謎かけみたい。
「あー…ごめん。」
急に謝られて、それもまた理解できない。
(なんで謝るの?)
危うく出かけた言葉を心の中に閉じ込めた。
きっと、それに対してもあなたは謝る。
本当はそんなことじゃなくて、謝りたいのはこちらのほうで。
嬉々として一生懸命話してくれているのにちっとも理解できなくて。
「今度は写真撮るから。」
沈黙を打破してくれたのはあなた。
「つか、携帯とかあるんだからさ。最初から撮ってきてよ。」
違う。そうじゃなくて。言葉で伝えるのは苦手。
「そうだね。」
苦笑いと携帯を見つめる姿と。
本当に言いたい言葉が胸の奥につかえてる。
チクリ
難しい言葉でも何でもないんだけれど。
きっとこのタイミングを逃せば、その意味は伝わらなくなってしまう。
この時間が過ぎてしまう前に。この話を終わらせてしまう前に。
遠くであなたを呼ぶ声が聞こえた。振り返る前に言わないと…
「…ありがとう。」
自然と声が小さくなった。
たった5文字の言葉。何が言いにくいのかと問われれば、それこそうまく伝えられないところ。
呆然としたあなたが、こちらを見つめて…
(なんか間抜け)
とにかくそんな事を思った。でも、やっぱり言わない。
さほど長い間があったわけではないけれど、不思議な沈黙。別に今更それが気まずいとも思わないけれど。
「え、何が?」
この言葉一つで、
グーで殴りたいと思いました。
「前言撤回。死ね。」
言葉の暴力を置いて、先にその場を後にした。