部屋で寝込んでいると母がドアをノックした。

「入るよ・・・」

そう言いガチャッと部屋を開けた。

「出てけっ!」


具合が悪いながらも母を怒鳴りつけた。

いつもは家にいない母が今はいる。

これまで、一人だった家に母がいるのは違和感を感じた。

いつもは朝早くから夜遅くまで働いていて顔を合わす機会がほとんど無かった。

昔であれば、こういう時にはお互い顔を突き合わして相談をしていた。

そこでいつもマコトは泣いていた。

母との少ない時間、思いを伝えられる時間、その時間は母と目を見て真剣に話すと涙が止まらなかった。


だからこの時、その現象が起こるのが嫌だった。


「これ食べて・・・」


母はリンゴを4等分に切ってお皿にのせて持ってきていた。


「いらねぇよ・・・
出てって・・・」


「これ・・・」

そう言いながら母がリンゴののった皿をマコトの前に差し出してきた。


「いらねぇって、言ってるだろうがっ!」

「バシッ」

マコトはそのお皿を叩き、母の差し出したリンゴは部屋に転がった。


それを見た母がマコトを睨みつけた。

そしてマコトも母を睨みかえした。


そして、無言の状態が30秒位は続いた。



幼い頃は目を合わして話しているとマコトが先に泣いていた。



だが、その場面でこの時初めて母が膝をつき先に泣いてしまった。



それを見てマコトは自分の存在がとても冷たく酷いものであると感じて耐えきれなくなった。

泣いている母をそのままにして、具合の悪いのも忘れて家を飛び出した。


最悪な気分で、最悪な気持ちで、最悪な自分にどうしたらいいのかわからなかった。


外はもうすでに冷え切っていた。


また先ほどいた公園に戻るのであった。


自分の素直な気持ちを出せない。


そして起こった事が受け入れられなかった。


(死にたい・・・)


そんな単純な発想しかもう出来ないくらいに追いつめられてしまった。


公園について自分の居場所がもう無いと思えた。


ベンチに寝転がり眠ってしまおうと思った。