「真面目に言ってるの?」

「うん、真面目だよ!」

「金だと一回じゃならないよ、金色になる脱色剤を買ってきて、黒から茶色にしてから、また同じので、抜かないといけない。」
「ムラになるかもだし・・・」

「脱色剤って、いくらくらい?」

「700とか800円くらいじゃない・・・」

「そうか、ちと高いな・・・」

「親とか大丈夫なの?」

「お母さんが、厳しくて…」

何故かお母さんのくだりを話した時の声が上ずっていて、泣きそうな声に聞こえた。

「のんちゃんっ!!マコト君っ!!」

班長の力強い声がして、そこで会話は終わった。

「サオちゃん。脱色剤で髪の毛染めるんだって。」

「ふうん。」

班長は髪の色には全く興味がないようだった。

「みんな終わったから、教室戻ろうっ!!」

班長はすごいエネルギッシュで声を聞いてると元気が出る。
全く来なかった学校で、偏見を持っていた真面目な子もなんだか自分とそんなに変わらない気がしていた。
今まで、見た目で判断してたのは自分の方だったんじゃないかと少し疑問にもなった。
みんな同じ気持ちで我慢している。
生まれた環境が違えば、育ちも違う、なんて思ったりもした。
俺だけが小さいことから目をそらし、逃げてるだけなのかもしれないとも思った。
でも、何故かそれを素直に受け入れることがマコトにはできなかった。

その日の帰りの会、ノンちゃんはお知らせを見て、「やべぇ〜」などと独り言を言っていた。
そんなに、独り言を聞いたのは初めてで、誰もかまってないから、マコトは何がヤバいのかが気になった。

「何がヤバいの?」

「そろそろ、中間テストだよ。
・・・勉強してる?」

「しない。」

「受験とか、不安じゃないの・・・」

「全然。多分行かないから。」

マコトは高校に行くか、行かないかも決めてなかった。
どうせ、良い高校には、もう行けない状況で、どうせ変な高校に行くくらいなら、仕事をしようと思っていた。

「いいな・・・」

何故かその時のノンちゃんの言葉が嬉しくなかった。
マコトは高校に行ける方がうらやましかった。