「今だから、ですわ。父が私にお見合いの話を勧めてきて。でも、知らない人のところになんて行きたくありません。ハルお兄様なら、父も納得するでしょうし」


「けど、俺が拒否したら?」


「もう、伯父様に許可は取りましたもの。組長命令なら、誰も逆らえませんでしょう?」


「あのクソ親父…」



ハルがポツリと失言を漏らす。


おじさん、お祭り好きだからなぁ、なんて私が他人事のようにぼんやり考えていると、目の前に若菜ちゃんの顔。



「サクお姉様、ハルお兄様の心は自分の物だ、なんて思っていてはダメですわよ?人の心は変わるものです」



その台詞に、一瞬ドキリとする。


まるで心の中を見透かされたようで、居心地が悪い。


「とにかく、勝負は正々堂々といきましょうね。詳細については、追ってお知らせしますわ」



若菜ちゃんはそう言って、お人形のような笑顔で片手を差し出した。


その小さく白い手を掴み、握手を交わす。