「それで、いったい何?急にこっちに来るなんて」
ハルが尋ねると、若菜ちゃんはニコニコしたまま答えた。
「今日はね、ハルお兄様ではなくサクお姉様にお話があって参りましたの」
「え?私!?」
意外過ぎて、私は一瞬面食らってしまった。
若菜ちゃんが昔からハルになついているのは知ってる。
そのおかげ、と言っていいのかは分からないけれど、私も多少は若菜ちゃんと話したりもする。
でも、それはあくまでハルのついで。
わざわざ若菜ちゃんが私に会いに来ることなんて、今まで一度だってなかった。
「えっと、で、何?」
私が尋ねると、若菜ちゃんはあっさりと答えた。
「実は、サクお姉様と勝負をしたいんですの」
「勝負…?」
「ええ。ハルお兄様の婚約者の座を賭けて、私と勝負していただけません?」
…。
「「はぁ!?」」
広々とした車内に、私とハルの叫びにも似た声がこだました。