若菜ちゃんは私の問いかけに、あくまで明るく答えた。



「とりあえず、一度組に帰って、父にありのままを話してみようと思っています」


「…そうか。でも…」


「もし、説得出来なかったら、向井と2人で生きていきます。2人ならきっとどこへ行こうと大丈夫だと思います」



その笑顔はとても幸せそうで、私は頷くことしかできなかった。



「ねぇ、サクお姉さま。実は私の初恋は本当にハルお兄さまでしたのよ」


「え?」



突然の話題転換に、私が戸惑っていると、若菜ちゃんは小さく笑った。



「でも、すぐに私には無理だって気付きましたわ」


「どうして…?」


「そんなの、決まってますわ。今も昔も、ハルお兄さまの目に映っているのは、サクお姉さまだけですもの」



若菜ちゃんのそのセリフは思ってもいなかったもので。

私は何にも言葉が出てこない。


ハルの気持ちなんて、私には分からない。

いつだって、自信なんて欠片もないのに。



「ハルお兄さまは不器用だけど、サクお姉さまを誰より大事に思ってますわ。だから、たまにはサクお姉さまも素直になってくださいね」