そう言って微笑む向井の横顔は、何だか切なくて胸が痛くなった。


私は、この横顔を知ってる。

まるで鏡を見てるみたいだ。


向井の気持ちがよく分かる。


私がハルを想うように、きっと向井も…。



「…若菜ちゃんが好きなの…?」



遠慮がちに私が尋ねると、向井はハッとした顔をしてそれから小さく頷いた。



「…誰よりも、大切な人です。自分の命さえ、差し出しても構わない」


「そんなに想ってるのに、このままでいいの?何も伝えなくていいの?」



このままなら、どちらに転んでも、若菜ちゃんは誰かのものになってしまう。

私は絶対にイヤ。
ハルが誰かのものになるなんて許せない。


だから今も必死に足掻いてる。



「…自分は側にいられるだけでいいんです。何かを望むなんて許されない」


「…そんなの、ただの言い訳じゃん」



どうしても納得できなくて、私は言った。


向井は黙ったまま、またいつまでも夜空を見上げていた。