「命、を?」



私はそう問いかけて向井を見た。

向井と若菜ちゃんの出会いなんて、私は知らない。

いつの間にか若菜ちゃんの隣には向井がいて、それが当たり前になっていた。


向井はまだ夜空を見上げながら、ぽつりぽつりと昔話を始めた。



「…自分はいわゆる妾の子でした。父親は自分を認知せず、母親も早くに亡くなって、その後は親戚中をたらい回しにされました」


「…」


「…そんな環境で、まともに育つはずもなくて、悪ぶって族に入ってみたり、チンピラの真似事してみたり。そんなときに、ヤクザのいざこざに巻き込まれて、大ケガを負ったんです」



そこまで言うと、向井は言葉を切って、微かに笑った。



「ああ、死ぬんだなと思いました。星がやけに綺麗で、柄にもなく、死んだら星になれるだろうかと思ったりして。けど、死ななかった。あんなゴミみたいな自分を、お嬢が拾ってくれたんです」


「若菜ちゃんが?」


「ええ。まだ幼かったお嬢が分家頭に自分を助けて、組に置くようにと話をしてくれた。だから、自分は今、生きていられるんです」