「心の中でゆっくり3数えて、一気に引き金を引く」
ハルの言葉を頭の中で反芻して、引き金を引いた。
真っ直ぐ真っ直ぐ。
弾が的へと吸い込まれるように飛んでいく。
思わず息を飲んだ。
「ほら、ドンピシャ」
「う、そぉ?」
信じられない。
あんなに苦労しても一度も当たらなかったのに。
今さっき飛んでいった弾は見事にど真ん中を貫いていた。
「やっぱ、教え方がいいと違うよね」
ハルが妙に誇らしげに笑う。
それだけで胸が弾む私は、本当にどうかしてると思う。
心の中で、好きと嫌いがせめぎ合う。
私はハルが好き?嫌い?
ハルは私が好き?嫌い?
分からないことばかりで気持ちが落ち着かない。
「ねぇ、ハルは私に勝ってほしい…?」
目を合わせずに、ぽつり聞いてみる。
ハルはしばらく何も答えてくれなくて。
それから小さく、さぁとだけ言った。