なんだかイライラする。
何で私がこんなに苦労しなきゃいけないんだろう。
そもそも、ここで婚約者の座を守ったとして、どんな意味がある?
ハルの心がどこにあるのかも分からないのに。
苛立ち紛れに、足元にあったゴミ箱を蹴りつけると、思いの外大きな音が鳴ってビクリとした。
「ちょっと。人んちの備品壊さないでよね」
「!」
更に背後から声をかけられて、またビクッと体が震えた。
慌てて振り向くと、そこにはハルが立っていた。
「な、に?何の用?今、練習中なんだけど」
ここ数日、ハルとまともに顔を合わせていなかったので、何だかとても気まずい。
私がぶっきらぼうに告げると、ハルは悪戯っぽくクスリと笑った。
「どうせサクのことだし、行き詰まってんじゃないの?昔から下手くそじゃん?」
「余計なお世話なんだけど」