若菜ちゃんの全てを知っているわけではないけど、何もかもが彼女らしくない。

たまにしか会わない私でさえそう感じるのだから、向井は尚更不可解に思っているかもしれない。


そのまま向井が黙り込んでいると、若菜ちゃんは口許を押さえて、半ば自嘲気味に小さく笑った。



「嫌ですわ。本気にしないで下さい。…あなたにそんなこと出来るわけありませんものね。ただ、からかっただけです」


「…!」


「とにかく、誰が何と言おうと、私はこの勝負に敗けるわけにはいきません。たとえ、どんな手を使っても」



若菜ちゃんの瞳はゆるぎなく、真っ直ぐだった。


それは、私から見ても痛々しいほどに。


その様子に、向井ももう何も言えないと感じ取ったのか、気まずそうに若菜ちゃんから目線を反らした。



私も、それ以上そこにいるのは辛くて、そっと裏道を通って敷地の外へ出た。