「ちょっと、サク!!いいの、あんなの許して!」


「オハナさん、ちょっと落ち着いて…」



ノブが必死に宥めても、オハナの怒りは収まらないらしい。


むしろ、何だか私の方がずっと落ち着いているかもしれない。


ただ単に、まだ敗けたっていう事実が飲み込めてないだけかもしれないけれど。


「オハナ、いいんだって。どんな場合でも、極道は気を抜いちゃいけないんだ」


敵に同情するなんて、本来ならもっての他なんだから。


私がそう言うと、オハナはまだ憮然としながらも静かになった。



「でも本当、信じられない。あの若菜って子も、ハルも…」



ハルの名を出されると、何だかいたたまれない。


ハルは正しいことを言ったまで。


でも、その台詞は、決して婚約者に向けられたものじゃなかった。



「ごめん。ちょっと外の空気吸ってくる…」



私はポソリと呟くと、そのまま一人、若菜ちゃんの後を追うように外へ出た。