「ちょっと!今のナシでしょ!?あの女、仮病使ったじゃん!!」



まだ呆然としたまま、何とか立ち上がった私の耳に、オハナの叫び声のようなそんな台詞が響いた。


目をやると、顔を真っ赤にしてオハナが怒っている。

たぶん、“あの女”とは若菜ちゃんのことだろう。



「どんな理由があろうと、敗けは敗けだろ」



オハナに向けてか、それとも私にか、遠い位置で、少しの同情もなくそう言い放ったのは、他でもなく、ハル。



「ハル、あんたどっちの味方よ!!」


「別に。俺は平等だけど?」



何も言えない私の代わりにオハナがハルを問い詰めた。


その答えに、また私の心臓が痛む。


それでも。


ハルの言い分は、確かに正論だ。



「…オハナ、もういいよ。ハルの言う通り、敗けは敗け。若菜ちゃん、この勝負、完全に私の敗けだ」



私がそう言うと、若菜ちゃんは、無言のまま小さくお辞儀をして、道場を出て行った。