「では、両者前へ。ルールは簡単だ。とにかく相手から一本を取れば勝ちだ。いいな」
審判は他でもない、組長。
私も若菜ちゃんも、その台詞に頷いた。
お互いに小さくお辞儀をし、構える。
「では、始め!!」
静まり返った道場に、組長の声が響き、私は若菜ちゃんと向き合った。
さすが、ヤクザの娘と言うべきか。
若菜ちゃんは、私と対峙しても決して怯まない。
意外なほど力も強くて、その辺の男よりもよっぽど腕が立ちそうだ。
けど。
やっぱり間違いなく、体格の差はある。
これなら、いける。
私がそう思った瞬間、ふいに若菜ちゃんの力が緩んだ。
「?」
突然のことに技もかけられずにいると、急に若菜ちゃんが胸を押さえて苦しみ始めた。
「え、ちょっ!大丈夫、若菜ちゃん!?」
うずくまってしまった若菜ちゃんの肩を触ろうとした途端、私の世界がひっくり返った。
それは、比喩なんかじゃなく、リアルに。