ああ、ダメダメ。
今は余計なこと考えている場合じゃない。
目の前の勝負に集中しなくちゃ。
「サクお姉さま、お待たせいたしました」
私がハルから目線を反らすと、道場に若菜ちゃんと向井が現れた。
白い胴着を着た若菜ちゃんは、いつもより更に華奢に見える。
けど、姿に惑わされちゃいけない。
ああ見えて若菜ちゃんも、小さい頃から護身術やら武術やらを習っていて、相当な腕前らしいし。
「さて、役者が揃ったな。じゃあ早速始めることにするか」
中央に陣取る組長が、私たち二人を代わる代わる見つめて言った。
いよいよ始まるんだと思うと、緊張で身体が震える。
大丈夫。
仮に私と若菜ちゃんの力が互角だったとしても、体格の差があるから、その点で私の方が有利なはずだ。
いつも通りやれば、私が負けるなんてあり得ない。
絶対に大丈夫。