「あー、そう。よぉっく分かった。結局ハルにとっては婚約者なんて誰でもいいってわけだ?」
「え?何か言った?」
「…っ!何でもないっ!!」
振り向いたハルの顔を見ることなく、私は部屋を飛び出した。
勢いよく扉を閉めて、ドカドカと廊下を歩く。
すれ違う組員たちに驚いた顔をされたけど、そんなの関係ない。
「本っ当、ムカつく!!」
でも、いったい何に?
若菜ちゃん?
ハル?
組長?
それとも、みっともない私自身に?
たぶん、その何もかもに、かもしれない。
「…ハルのバカ…」
意地でも泣くのは嫌で、唇を強く噛んだ。
もうこうなったら、何が何でも勝ってやる。
ハルが私を恋愛対象として見ていなくたって構わない。
ただ、ハルの隣にいるのは私でありたかった。