アタシタチノオウジサマ

　ある日のお昼。教室からお弁当を持って抜け出し、屋上へと向かった。もう教室で食べるのはうんざりだった。屋上のドアを開けた瞬間、五月晴れした空が目の前に広がった。これまでの窮屈さから解放された気分になった。両手を広げて、思い切り深呼吸してみた。


「東京の空は汚れてるから、深呼吸しても意味ないよ。」
　

　突然誰かに話しかけられた。気がつくと目の前で東野さんが寝転がって本を読んでいた。


「東野さん！」


　びっくりして思わず大きな声を出してしまった。


「こんな至近距離で大きな声出さないでよ。」




　東野さんは迷惑そうにそう言った。


「何してんの？」


「何って別に…お昼食べる前に本読み終えちゃおうかなって思っただけ。」


「あたしも一緒に食べてもいい？」


「…勝手にすれば？」


　東野さんはぶっきらぼうにそう言った。綺麗なカールがかかった茶色い髪の毛を日の光が照らし、キラキラと輝いていた。よく見ると東野さんって本当に綺麗な顔立ちしてるよな。そう思いながら、隣に腰を下ろした。