アタシタチノオウジサマ

 今回の合コンは大して面白くもなかった。どうみても、女性経験の少なそうな奴ばっかりで、かなり面倒臭かった。次第にあたしは、カラオケばかり歌うようになっていた。そして、とりあえずメアドだけ交換して、合コンはお開きとなった。


「石橋さん。付き合わせちゃってごめんね。」


 帰り道で玉緒が謝った。石橋さんは、明らか作り笑いをしていた。


「そんなことないよ。楽しかったから!みんなどっち方面?」


 私と石橋さんが同じ方面で、あとはみんな別の方面だった。私たちは駅で別れを告げ、電車に乗り込んだ。


「石橋さん。本当はつまんなかったでしょ?」


 あたしは思い切って聞いてみた。すると、石橋さんはため息をついた。


「まあね。あたし、本当は恋とかしたくなくてよく分かんなかっただよね。」


「そうなんだ?本当に付き合わせちゃってごめんね。」


「あっ別に、悪く言ってる訳じゃないから!それよりさ、源さんって超歌うまいよね!」


「そんなことないよ。人並みだと思ううけど。」


 謙遜はしてみたけど、よく人に上手いねと言われるのは事実だ。そうやって口説いてくる男もいるけど。


「嘘だ!あたし、こんなに上手い人初めてだよ。ねえ、もし良かったらさ、一緒に軽音やらない?今2人しかいないんだ。」
 

 軽音?つまり、部活か…はっきり言って、高校は3年間帰宅部のつもりだった。だって面倒だし。中学の時はクッキング部に入ってたけど、意外に人間関係が複雑で本当に嫌だったのだ。


「ごめんね。あたし、部活とか興味ないんだ。」
 

 あたしはそう言い放って、電車を降りた。ちょうど駅に着いたのだ。石橋さんとはこの後も仲良くなることは無いだろうと、その時は考えていた。