アタシタチノオウジサマ

「そうだ。これ、夏になったらつけろよ。」

 光はポケットから小さな包みを渡した。中にはリストバンドが入っていた。

「前にあげたやつ、もうボロボロだろ?」


 そう、リーダーになってから二日後に光は同じようにリストバンドをくれた。夏が近いのに長袖を着ていたので、逆にばれていたらしい。その時の光の言葉は、未だに覚えている。

「隠せとは言わないけど、この方が気が楽だろ?葵が話したくなるまで理由は聞かないから。」


 あれから二年。

 母のこととか何も話せないまま、今日まで過ごしてしまった。何も話さないけど、それまでの間ずっと光はそばにいてくれた。

「ありがとう。」

 あたしはそのリストバンドを手首に付けた。袖を捲くるときに一瞬傷があらわになった。光はそれをじっと見ていた。

「なあ、俺達いつまでこんな関係続けるのかな?」

 光はぼそっと呟いた。思わず光を見ると、切なそうに見つめられた。

「俺のこと、まだ信用してくれないの?」

 信用ならとっくにしてるよ。

あれだけ一緒にいて、光のこと疑うわけないでしょ?

そう言いたかったのに言葉が詰まって出てこない。

「俺、今のままでも十分楽しいけど、本当は葵のこともっとよく知りたいんだ。」

 光は立ち上がり、あたしのブランコの鎖を掴み、腰を屈めながら顔を近づけてきた。


どんどん近づいてくる…。