アタシタチノオウジサマ

 光に連れてこられたのは廃墟のビルだった。鍵がかかっておらず、光は中へと入った。中には光と同じ色のキャップを被った数人の若い男女がいた。その人達はあたしをじろじろと見た。茶髪の男が光に話しかけた。

「光さん、お帰りっす。彼女ですか?」

「ちげぇよ。この人はな、今日から俺らのリーダーとなるべきお方だ。」

 一瞬空気がしーんとなった。しかし、数秒後には明るくなった。

「ついに見つけたんですか!」

「おめでとうございます。」

 訳のわからない祝福が始まった。

「でも、こんなにか弱そうな子で大丈夫ですか?」

「お前ら、驚くなよ。こいつはな、可愛い顔して一人で5人を倒したんだぞ。」

「えー!でも、証拠はあるんですか?」

 突然、ビルのドアが開いた。さっきまであたしと戦っていた5人が体を引きずりながら歩いてきた。

「ひどいっすよ光さん!」

「お前らの方がひどいだろうが。くだらねえナンパなんてしやがってよ。こいつらが証拠だ。」

 周りはざわついた。

「あの5人って結構強い方だよな。」

「すげえ。」

 あたしは本当に訳が分からなくて、光に聞いた。

「ちょっと…リーダーって何?」

「ん?今度新しいチーム作ろうと思ってさ、リーダー探してたんだ。で、ちょうど葵を見
つけたってわけ。」

「待ってよ!あたし、チームとかよく分かんないし…いきなりリーダーなんて困る!」

「大丈夫。俺がサブとしてサポートするから。」

「むしろ、あんたがリーダーやればいいじゃん。」

 突然、光は子供のようにいたずらっぽく笑った。

「俺さ、小学校の時から遠足の副リーダーとかばっかりやってたんだよな。だから、副とかサブになってリーダーをサポートするのが好きなんだ。」

 その笑顔に何も言い返せなかった。

 それ以来あたしはカラーギャング「バナナイエロー」のリーダーとなったのだった。