アタシタチノオウジサマ

　みんなが一斉に声のする方を振り返った。あたしも首を持ち上げてその人の顔を見ようとしたが、押さえつけられてよく見えなかった。


「誰だ？」


「紫音ちゃんと同じ制服着てるぞ。」


　その人はあたしに近づいてきた。


「あたし、あんたと友達になったつもりないけど、そこまで冷たい人間ってわけじゃないんだ。」


　気づくと東野さんの綺麗な瞳が、あたしを見つめていた。


「ふーん。紫音ちゃんの友達？結構可愛いじゃん。君も一緒に遊ばない？」


　カズヤ先輩はあたしの上からどいて立ち上がり、東野さんの頬に触れた。


「だから、友達じゃないつってんだろ。」


　東野さんはそう呟くと、カズヤ先輩の手を払いのけた。周りの男達はにやにやしながら東野さんをかこった。


「気の強い女は嫌いじゃないよ。」


　そう言ってカズヤ先輩が抱きつこうとすると、東野さんはすばやくよけた。カズヤ先輩は机の上に倒れこんだ。

　その豪快な音が合図だったかのように、たくさんの不良風の男女が現れ、カズヤ先輩達に襲いかかった。東野さんも男達を蹴ったり殴ったりしていた。しかも、すごく強い。かなりの大乱闘となった。


　あたしが茫然としているのに気づいた東野さんは、男を殴りながら声をかけた。


「さっさと逃げろ！」


「え？でも…。」


　正直言って、怖くて足がすくんでしまってその場から動けなかったのだ。それを見かねた東野さんは、黄色いキャップを被った男に声をかけた。


「光、この子安全なところに連れ出してあげて！」


「おっけい。」


　光と呼ばれた男はあたしの手を引き、外に連れ出した。