大好き‥だよ。

スグに追いかけたはずなのに、俊チャンの姿は見当たらなかった。仕方がないので、トイレの正面にある壁に寄りかかって待つことにした。

待っているとき、知らない人に2度見をされたりヒソヒソ話をされた。あんまり感じはよくなかったけど、でも「もう少しだよ」と自分に言い聞かせて隅っこで下を向いて待っていた。


『何してるの?』

何人の人を見送ったんだろう。漸く待ちに待った人物が目の前に現れた。

『ちょっと‥話したい事があって‥それで‥』

『それでこんな所で待ってたって言うの?』

『だって教室じゃ‥‥悪いと思ったから‥』

『別に良かったのに』

何でだろう?少し機嫌が悪いようだ。一度も目を合わせてくれない‥。私といる所を誰かに見られたくないようにも感じた。

『話っていうのはね‥』

すぐに終わらせてしまおうと思ったのに、そうさせてくれなかった。

『あのさ‥‥俺も話しあるんだ。だから放課後、陸上のときに勉強していた教室に来てくれないかな?』

『ん?
‥うん。分かった』

『じゃ、俺先に教室戻ってるから』

素早く走り出した時小さな風が流れてきた。だけどそれはスグに消えて、独りぼっちになったことを知らせてくれた。

戻らなきゃ。

とりあえず今しなきゃいけないことはこれだった。ぼーっとしたまま教室に戻り、自分の席に着いた。でも私の頭の中は

”俺も話しあるんだ”
”放課後‥来てくれないかな?”

という言葉しかインプットされていなくて、この言葉がテロップのようにエンドレスで右から左へ流れていった。

俊チャンの話って‥一体なんだろう?そればっか考えていて、授業に身が入らなかった。