大好き‥だよ。

はぁ~。
鏡を見たら酷い顔だった。頑張って笑顔を作ってみたけど無理しているのがバレバレ。さっきまでこんな顔をしていたと思うとゾッとした。目も真っ赤に腫れているし‥。

明日、華代たちに逢ったら真っ先に謝ろうと思った。

パシパシッ
両手で頬を叩いて気持ちを入れ替えた。

『よし、今日はもう帰ろう』

隣の教室を避けるように、少し遠回りをして教室へと向かった。

珍しく廊下が静かだった。校内に生徒達が残っている気配もしない。安心して教室の中へ入った。帰る準備もしないでトイレに向かったので、机の上はグチャグチャ。教科書やノートを机の上で整えてから冠(カブセ)を開けた。

『あっ!!』

ランドセルの中には、昨日一生懸命つくったチョコが入っていた。それを見た瞬間から心臓が激しく脈打った。その音は、学校中に響き渡ってしまいそうなくらい大きかった。

左手で心臓を押さえ、周囲に細心の注意を払いながら俊チャンのランドセルがまだあるかどうか確認した。

『由愛とまだ一緒なのかな‥』

黒いランドセルは、ポツンと机の上に置かれていた。ゆっくりと俊チャンの机に近づき、その場で一周して人がいないかどうか確認した。

誰も居ない。

ランドセルの前に立ち、何食わぬ顔で冠を開けた。山のようにチョコが入っていて気後れがした。でも、チャンスは今しかないと思い直し、持っていたチョコを詰め込んで冠を閉めた。そして、左右を確認して誰にも見られていないか再確認をした。

誰も居ない。

このまま教室に残っていると、俊チャンと由愛にはち合うかもしれない。2人を待っていたなんて思われたくないし、今すぐに教室を出よう。

自分の机に戻り、置きっぱなしだった教科書をランドセルの中に投げ込んだ。その瞬間だった‥教室の前の扉が開いたのは。手は振るえ、足は硬直したまま動けなかった。この場から逃げられない。

じっと教室に入ってくる人物を見つめた。