大好き‥だよ。

今日は、いつも以上に授業に身が入らなかった。休み時間が来る度に、俊チャンの周りにはクラスの女の子が群がっていた。その中には告白をする子もいた。その返事が気になって仕方なかった。私もその中の一人になりたい!!願望だけが先走っていた。

そんなとき、由愛が俊チャンに話しかけた。

『俊、話があるんだけど‥放課後隣の教室に来てくれないかな?』

さっきまでキャピキャピ楽しそうな声が聞こえていたが、一瞬にして静まり返った。

『今じゃダメ?』
『ダメ!!』

即答されたためか、深く悩んでいるような口調で言った。

『放課後は和樹たちとサッカーやるって約束したしな‥』

『すぐ済むから、お願い』

『‥‥‥分かった』

俊チャンは頭を抱えながら了解をした。

『ありがとう。じゃあ、放課後ね』

由愛は嬉しそうに席に戻って行った。今まで近づいてきた女の子とは違う反応。もしかしたら由愛と‥それは誰もが察したことだった。

見なきゃ良かった。
聞かなきゃ良かった。
知らなきゃ‥良かった。

今さら後悔したって後の祭りだ。現実を受け入れたくなくて目を閉じた。暗闇の中にまで由愛が出てきて”じゃあ、放課後ね”というセリフと、嬉しそうな顔が浮かんできた。それ以上見たくなくて目を開けると、今度は軽い目眩を感じた。

自分の気持ちを隠そうとした罰だと思った。

『結‥さん‥?』

不安そうな顔で悠君が見ていたけど、それには気付かずただ呆然と立ち尽くしていた。


その後の事は良く覚えていない。

笑い話でもないのに、常に顔をしわくちゃにして笑っていたことくらいしか‥。皆に心配かけまいとした事が、かえって周りを不安にさせていたなんて思いもしなかった。

授業中は、俊チャンを遠ざけて他の一点ばかりを見つめていた。掃除中は、無心で雑巾掛けをした。放課後は‥居場所がなくてトイレに駆け込んだ。