大好き‥だよ。

あれから数日が経ち、今は俊チャンと2人で静かに宿題をやっている。最近は先生も様子を見に来なくなったので、算数で解けない問題があると答えを見るようになっていた。それもあってか、宿題を早く終わらせて時間まで話している事が日課になっていた。

今日の話題は、前回込山さんに言われた言葉についてだ。持っていた鉛筆を筆箱に戻しながら話しかけた。

『ねぇ~俊チャン。前回込山さんが言っていた事なんだけどさ‥』

この話題にどれだけの関心を持っているのか反応を見ていると、俊チャンの肩がピクンと上がったのが見えた。少しは関心があると判断した私は、期待を込めた目で見つめた。

『100に出れない先輩の分まで頑張ろうと思うんだ。最低ラインは決勝に出ることで、目標は入賞することって決めたんだ。俊チャンはあの話を聞いてどう思った?』

『俺は‥』

まじめな顔をして、机の上に散らばっているノートやドリルを片付けながら言った。

『俺も絶対に決勝には出る。スタートダッシュさえ上手くいけば、1秒弱は自己記録更新できると思うし。そうなれば上位入賞だって夢じゃなくなる』

目がキラキラしていて自信に満ちていた。その姿があまりにも格好良くて、しばらく見つめていた。

すると、私の熱い視線に俊チャンは気付いた。

『何?俺の顔に何かついてる?(笑)』

『へっ?』

予想外の質問に戸惑ってあたふたしてしまった。頭の中をよく整理して、自分が何をしていたのか思い出していると、体中の温度が上昇しているのが分かった。固まっている私を見て俊チャンはお腹を抱えて笑っていた。

『もう、そんなに笑わなくても‥』

『悪い(笑)』

声に出して笑わなくなったけど、目が合う度に俊チャンの口元は笑っていた。それを見る度に恥ずかしかったので、この話題はこれで終わりにしようと思った。

『大会まであと少しだけど練習頑張ろうね。それから、こうやって2人で勉強するのもあと少しだね。よろしく』

明るく振舞って言うと、俊チャンの表情からは笑顔が消え険しい表情に変わっていった。心配になった私は恐る恐る声をかけた。