大好き‥だよ。

100に出場したかった先輩は沢山いた。でも、その中から選ばれたのは私だった。それなのに他の事を考えていた。

そんな自分が情けなかった。

申し訳なかった。

心の中で何度も「ごめんなさい」と謝った。謝って謝って、許してもらえるように大会で好成績を残そうと誓った。


きっと込山さんは気付いていたんだ。私が陸上以外の事を考えているって事に。だから、このタイミングを見計らってあんな話をしてくれたんだ。

込山さんの横顔を見つめていると、他の先輩がニヤニヤした顔で込山さんに近づいてきた。

『いい話じゃないか(笑)』

『き、聞いてたの?』

『イヤ~、聞いてるつもりはなかったんだけどな。おかしいな~(笑)』

『ヤダ!今すぐ忘れて!!』

両手を合わせてお願いすると、先輩は納得した様子だった。

『仕方ないな。込山がそんなにお願いするなら‥』

『ホント?ありがと』

込山さんがホッと一息をついていると、先輩は両腕を組んでしみじみ言った。

『私の分まで頑張ってか~』

『‥‥‥』

言葉にならない込山さんは、逃げる先輩をしばらく追回していた。


込山さんの言葉が身にしみた人物はもう一人いた。その人物もまた、陸上に専念するために、ずっと気になっていた事を聞く決心をした。

それをきっかけに、2人の仲が急接近する事になるとは‥この時はまだ気付いてはいなかった。