大好き‥だよ。

『‥‥のメニューをやらされて、それからスパイクは‥』

月曜日、学校に着くなり私は女子から、俊チャンは男子から質問攻めに合った。私たちは包み隠さず全てに答えると、途中から呆然と遠くを眺め出す人が出てきた。予想以上のメニューについていけないみたいだ。

『結凄いよ‥。それで足は大丈夫なの?』

『爪が食い込んでて今も痛みと戦ってる。でも、明日また履くし痛いなんて言ってられないっぽい』

『えっ!?そんな痛い思いまでして続ける価値があるの?』

予想外の答えに驚きを隠せないといった感じだった。

『だって、まだ1回しか行ってないんだよ?成果も出てないのに、コーチのやり方を否定することは出来ないよ。自分の意思で始めたことだし最後までやり遂げたいっていうか』

『私‥陸上クラブに入らなくてよかった』

『私も。絶対ついていけないと思う』

『私だって‥』

次々に挫折の言葉が飛び交った。

確かに1人なら辞めたいって思ったはず。誰にも相談できないし、誰も共感してくれないし。でも私は1人じゃないから。私には俊チャンがいるから‥だから、きっと頑張れる。

始めは「一緒にいられる」そんな軽い気持ちで始めたけど、日を追うごとに「前回よりも速くなりたい」その思いも強くなっていった。練習はキツイし足は痛いけど、でも数字に変化が表れると痛みなんて我慢できた。


『さて、今日の練習も頑張ろうね』

いつもの様に宿題を終わらせて帰る準備を始めた。でも、何故か俊チャンはその場から動こうとしなかった。

『どうしたの?もう時間だよ?』

『あっ、うん‥』

両手に力を入れて、何か言うのを躊躇っている様に見えた。

『俊チャン‥』
『あのさ‥ずっと前から気になってたことがあるんだけど‥』

『うん。なに?』

『えっと‥』

それっきり黙ってしまった。

教室には私と俊チャンだけ。
静まり返った教室は、時計の秒針の音がリズム良く聞こえた。