大好き‥だよ。

『なんかね、嫌だったの』

唐突な出だしに困惑して言葉も出なかった。華代は、私の表情が固まっていたことに気付くと「大丈夫？」と言いながら、私の目の前で手を振って現実に戻してくれた。

『ありがとう。もう大丈夫だよ。それで、何が嫌だったの？』

首を横に傾けて聞き返すと、言葉を選ぶように、ゆっくりと今の気持ちを話してくれた。


『なんかね、クラスの女の子が和樹の応援をしているのがね、なんか嫌だったの。あっ！！結はいいの。結は、俊君しか見てないし和樹とは仲の良い友達だって事も分かるし。でもね、他の子が応援しているとね「やめて」って叫びそうになっちゃうんだ。

どうしてだろうね。
さっきのプレーの後もね、純粋に「格好良かったよ」とか、「ナイスプレー」って言えなかったの。他の女の子と同じ時に、一緒の事を言いたくなかったって言うか‥ん～なんて言えば伝わるんだろう？』

悩んでいる内容がとても可愛かった。

何だかこれ以上華代を見ていたら笑ってしまいそうだったので、反対の方を向いた。


『何で何も言ってくれないの？』

そう言って私の体を何度も揺らすので、目を擦りながら振り返った。

『だってさぁ～‥』

すると、前方からクラスの男の子３人が、こっちに向かって歩いてくるのが見えた。すぐに３人も私たちに気付いて、小走りで近づいてきた。

私は、タイミングを見計らって一言言った。

『嫉妬してるんだよ』

想像していたよりも自分の声が響いて少し恥ずかしかった。でも、私の声は、ちゃんと和樹君の耳にも届いていた。


『誰が嫉妬してるの？』

私と華代を交互にじろじろ見ながら止まった。ふと視線を落とし華代の手を見ると、両手に握りこぶしを作っていた。振り返るのを躊躇っているように見えた。

勇気を出して正直な気持ちを伝えて欲しい思い、「頑張れ」と耳元で囁いた後、華代を半回転させて背中を軽く押した。