大好き‥だよ。

『名簿順に座ってるから、前後が女子だけどいいよな?隣の席は、このクラスの学級長だから、分からない事があったら全部あいつに聞けばいいから』

『分かりました』

鳴海君はゆっくり教壇から降りて、私の横を通り過ぎた後、ランドセルを机の横にかけた。椅子を引きながら俊チャンに向かって「よろしく」と挨拶してから座ると、俊チャンは簡単な自己紹介をしていた。

『さっき先生が言ってたけど、俺は学級長の松浦俊。みんなからは俊って呼ばれてるから、鳴海も俊でいいよ。ちなみに俺が好きなスポーツは野球だから』

そう言いながら右手を差し出すと、鳴海君は俊チャンの右手をしっかり掴んだ。

『じゃあ、俺の事も悠って呼び捨てで良いから。これからよろしく』

二人が微笑み合っていると、通路を挟んで隣に座っていた和樹君も、いつの間にか二人の手の上に自分の手を置いていた。

『俺も隣人なんで』

少し寂しそうな表情で言うと、鳴海君はくすっと笑いながら「和樹と早くサッカーしてぇ」と呟いていた。


先生には、最初からこうなる事が分かっていたのだろうか?急に「お前達、今から校庭でサッカーやるぞ(笑)」と叫んでいた。訳の分からない私達は、ポカンとした顔で先生を見た。すると、

『サッカーしたくねぇなら、時間割どおり社会始めるけど?』

『‥‥‥』

一瞬クラスが静まり返ったかと思うと、男子が一斉に立ち上がって教室に置いてあるサッカーボールを持って教室を飛び出して行った。先生が「廊下は走るな!!」と注意しても、誰一人として守る男子はいなかった。

そんな男子の行動に圧倒された鳴海君も、いつの間にか俊チャンと和樹君と一緒に教室を飛び出して行った。


残された女子は、靴に履き替えた後もゆっくりと歩いていた。すると、後ろから先生の声が聞こえた。

『先生より後に校庭の中央に来た生徒は、外周3周な(笑)』

不適な笑みを浮かべながら、私達の横を優雅に走り抜けて行った。外周を3周もなんてしたくない私達は、懸命に校庭の中央に向かって走った。それなのに、私達の思いとは反して、先生は途中から歩いていた。


漸く私達の前に現れた先生は、息を切らせて「じゃあ、チームは‥」と言うと、いつもの様に西山君が余計な一言を言った。