奈々はただ眠っている。


苦しかっただろうな……


だけど、俺は奈々を好きじゃだめ。



少しでもいいから……



奈々と……



「…………ん……」


俺は眠っている奈々にキスをした。



これが最後だよ。


涙があふれそうになっても、俺は行く。

じゃあな……

奈々の髪に優しく触れると保健室を出た。



奈々の枕元にはくまのぬいぐるみ。



里沙と会う前、クリスマスに会うという事でプレゼントを買っといた。



お見舞いだ。


これが最初で最後のプレゼントか……


もう優しくできない……


俺は後ろを振り向かずに保健室を出た。











「奈々、どうしたのそれ?」


奈々が目を覚ますと柚がいて、隣には悠紀が置いていったくまのぬいぐるみがあった。


「……えっ?」


奈々はくまのぬいぐるみを見る。


「…………悠紀?」


「ちょ……奈々!?」


奈々は心臓をきにせず慌てて保健室を出る。


でも……


「もういないよね…」


奈々はそう言い残すと保健室に戻った。







悠紀はそんな事を知らず、ただ教室で辛さを隠してた。


……ごめん…奈々……


「悠紀ばかだな〜」


「なんだよ〜」


友達とふざけたり平常心を装った。



だけど、雅也はなんとなく悠紀の様子に気付いたようで。


ただ心配そうに悠紀を見ていた。









「悠紀〜早く!」


「ああ……」


放課後には里沙と会う。



奈々の悲しそうな表情が頭から離れてない。



奈々の笑顔が見れれば俺は少しでも幸せでいられる。



ごめんな…奈々。


守りたいのに…そばにいたいのに。



傷だらけの奈々をさらに俺は傷つけた…



でも……俺らのためだ。



これ以上奈々の隣にいたらお互いが辛いんだからな?


俺はただ里沙に優しくしていた。


子供の事も想う。