なんでこんなに優しいの?
みんな俺の事なんか気にかけない。
雅也は親友だけど、あまり自分の事をあいつに話してないから……
なのに…奈々には……
すると……
「私もそう思ってたの。」
「えっ……?」
「私、お父さんにいらないってはっきり言われたの。」
そう言うと奈々は服の袖を捲くる。
「……………えっ…」
奈々の左手首には傷痕がある。
………リスカ……
「ばかだよね…私。病気とお父さんに追い詰められて…」
「奈々……」
「病気であきらめたものはいっぱいあるし、お父さんにきつく言われてそうなった。」
俺は言葉が出なかった。
まだ幼い女の子が父親にいらないと言われた辛さ。
病気……
「でも、今はね…友達もいるし、叔父さんと叔母さん優しいし…それに…悠紀いるもん。」
奈々はにっこりと笑って言う。
俺ばっか不幸なわけじゃない。
奈々だって苦しい……
「悠紀なら大丈夫。お父さんとなんとかなるよ?私はなんとかならないまま離れたから…」
「今、奈々のお父さんって……」
「知らない。急に家出して…それから連絡なし。」
「そうだったんだ…」
奈々は苦しんでた……
なのに、いつも笑って…
明るくて自分より人を思う。
だから…不安になる。
「ごめんね?こんな話…あ、柚ら呼ぼう?」
奈々は笑って言う。
奈々………
「俺守るよ。」
「えっ……?」
クラブに戻ろうとした奈々は振り向く。
「奈々の笑顔もみんなみんな。こんな傷作らないように…」
俺は奈々の左手首に触る。
「悠紀はやっぱり優しいんだね…」
だってそれは……
「奈々だからだよ。」
「えっ?」
「雅也と柚ちゃん呼ぶか〜」
「ちょ…待ってよ…悠紀〜どういう事〜?」
「さあね〜」
奈々の傷のが俺よりもっともっと深い……
だからなんとかしてあげたい…


