〈ガラッ〉
「お待たせ〜」
奈々の叔父さんと叔母さん、由美さんと親父が来た。
「あと少しで看護師さん来るわよ?」
「あ、うん…」
でも直前は奈々もやはり不安なよう。
俺は奈々の手をぎゅっと握る。
薬指には俺があげた指輪。
首にはペアのクロスのネックレス。
奈々……
俺の表情も変わる。
頭には奈々との思い出が浮かぶ。
初めて会った時。
みんなでお泊り会。
俺から離れた時。
告白した時。
デート………
もう…離さないって決めた……
だから
奈々を離さないで……
握ってるから奈々手の温もりが感じられる。
またこの温もりを感じられるように
俺らはみんな願う……
奈々の幸せと無事だけを………
〈ガラッ〉
「林さん。行きますよ?」
奈々が手術室まで運ばれる。
みんなでついて行く。
俺はただ奈々の手を握る。
「大丈夫だよ。悠紀…また…ね?」
奈々はこんな時まで俺を安心させようとしてくれる。
「奈々…愛してるからな。」
「わ…恥ずかしいよ。」
そう奈々は言うと私もだよと言って笑って手術室に運ばれた。
「みなさんはここで待ってて下さい。」
手術室の前に置いてある椅子にみんな座る。
だけど
俺だけは少しの間、扉を見つめて立っていた。
どうか神様……
世界で1番大好きな宝物を俺から奪わないで……
また
来年……あの海で。
なあ奈々…
信じてるから
俺は泣かないよ。
涙は嬉し涙だけでいい…
俺に悲しい涙じゃなくて嬉し涙を流させて……
「奈々っ…」
俺は健康のお守りを握りしめ
ただ待っていた。
君との楽しい時間を再びって………


