「だって…奈々さんを独り占めできるだろ?」
「う、うん……」
奈々はすぐ戸惑う。
「本当、わかりやすいやつ。」
「悠紀がいけないんだから…すぐそういう事言うし……」
「…ん?俺は普通に話してるだけだけど?」
「うっ……」
「あはは。負けた?この俺に♪」
「ゆ、悠紀〜」
こうやってからかったり一緒にふざけたりできる。
そんな時間が今日に限ってはすごく大切に思えた。
普段は空気みたいに当たり前に感じてた。
でも今は違う……
「あ、売店…奈々行けないんだよな?俺がなんか代わりに買ってこようか?」
奈々反対されたし……
すると
奈々はまた俺の服の裾をつかみ、首を振る。
「奈々……」
「今はいい……いて?」
奈々は病気のせいか前より俺と離れるのを嫌がるようになった。
「うん。いるよ。」
俺は笑って奈々の頭を撫でる。
一人が怖いのかな?
それとも
俺と離れたくない?
「時間がこんなに大切に思えるなんてね…」
奈々は病室の時計を見ながら言う。
だけど
その表情は…
いつもの子供みたいな奈々じゃなくて…
16才の女の子の表情だった…
たまに見せる奈々の大人な表情に俺はドキッとする。
「あーあ…なんか食べたかったな…病院食まずいんだよ?」
いつもの奈々に戻る。
「ん〜何食べたいんだ?」
「例えば…悠紀が作ったハンバーグとか♪」
「俺の?」
「悠紀限定。」
「俺は奈々のが食いたいし。」
「また今度ね?」
また今度……
その言葉に安心した。
「じゃあ…差し入れで何か…」
「ケーキは?」
「俺が作るの?キモいだろ…」
「悠紀は料理上手いじゃん。」
「ん〜礼とかに習うか…」
「礼さんに?」
「あいつ上手いからさ。」
雅也は礼のそんな所もいいのかも……


