「じゃあな。」


家の前に着くと俺は言う。


「うん…」


「一人で帰れる?」


「へーき。」



奈々は寂しそうに言う。



本当は離したくない…



不安は消えたわけじゃない……


「奈々。」


「…………ん?」


俺は奈々の頭を撫でる。



「また明日。」


「……う、うん!」


奈々は嬉しそうに言う。


「おやすみ。」


「おやすみなさい。」



奈々は家の方向に向かって歩き出す。


小さくて細くてか弱そうな背中を俺はただ見つめた。



小さくなるまで。




今まで女遊びしかしなかった俺。


でも今は……



一途に奈々だけを…


奈々を守りたい…



俺は奈々から見たらどんな男かな?



ちゃんと奈々の彼氏になれてますか?









〈ガチャッ〉


「……ただいま…」


「悠紀〜遅くないか?」


帰るなり親父が言う。


「奈々んち行ってた…」



「奈々ちゃん体大丈夫なのか?」



えっ……



親父は俺を見つめる。


「なんで?」


「いや、お前も色々大変だろ?彼女は病気だし…油断できないからな。」



「元気だよ。あいつは。」


俺が代わりになりたいよ……


奈々の代わり。



自分より奈々。



そんな風になってた。



自分は奈々の苦しみをわからないから…





「あら、悠紀君おかえり…」


「風呂。」


俺は着替えを取りに部屋に向かう。



「悠紀〜」



親父を無視して。



不安を消し去りたい。



苦しみを消し去りたい。



俺らには問題がある。








風呂に入っても心は癒えなかった。



難しいよ……