水谷は路地の入口で硬直していた。 殴られた恐怖が彼を怯えさせていたのだ。 彼は足が竦んでそれ以上先へ進むことができなかった。 美留久の窮状が察せらてはいたが、彼は己の身も可愛かった。 まだ死にたくはなかったのである。 膝を抱えて蹲る。 その間にも、美留久は絶望の淵を彷徨っていた。 廻される度に、美留久は覚醒し、無駄な抵抗を試みた。 短い呻き声の後に響く、鈍い肉を叩く音。 殴られ、気を失い…… それでも美留久は抵抗を止めなかった。